精液検査とは?検査項目・検査を受けるタイミング・検査の流れを解説

近年、男性側の不妊症も注目されるようになり、精液検査に関心を持つ方が増えています。

不妊の原因を調べるうえで、精子や精液の状態を知ることは大切です。

検査を受けることで、自宅で分からない精巣の機能や精子の運動率など、妊娠に関わる重要な情報が得られます。

この記事では、精液検査の内容や検査項目、必要な準備や検査の流れ、検査を利用できるクリニックや費用について詳しく解説しています。

自分やパートナーの妊娠の可能性を確認し、今後の治療や生活方針を選ぶ参考にしてください。

この記事で分かること
  • 精液検査とは?
  • 精液検査の主な検査項目
  • 精液検査を受けるタイミング
  • 精液検査での注意点

精液検査とは?

精液検査

精液検査とは、男性不妊の検査であり、ご夫婦で不妊治療を始める際に男性が受ける初期検査のひとつです。

男性側の生殖機能や不妊の原因を調べるために必要なもので、マスターベーションにより採取した精液を用いて、精子の量や質、濃度、運動率などを評価します。

年齢や検査回数に制限はありませんが、治療開始前に必ず受けることが必要です。

不妊症の検査のなかでも基本中の基本といえる検査なので、正しい状態を把握することが精度の高い治療方針につながります。

精液検査を受けられる場所

精液検査を受けられる主な医療機関には、

  • 大学病院
  • 総合病院
  • 一般病院
  • 不妊治療専門のクリニック
  • 産婦人科医院

などが挙げられます。

しかし、大学病院や総合病院では紹介状が必要で待ち時間も長く、初めて精液検査を受ける方にはハードルが高い場合があります。

産婦人科医院によっては精液検査を実施していないケースもあり、不妊治療専門クリニックなどを利用する方が手続きも含めてスムーズです。

精液検査の費用相場

精液検査の費用相場は、一般的には5,000円~10,000円程度となっています。

医療機関やクリニック、検査内容によって若干の差が生じる場合もありますが、相場の範囲内で収まることが多いです。

自費診療となることがほとんどで、検査費用の詳細は受診前にクリニックに確認しておくと安心です。

自然妊娠に期待できる基準値(WHO)

自然妊娠に必要な精液の状態には、WHOが定めた基準値が存在します。

項目WHO基準値説明
精液量1.5 mL 以上射精1回あたりの精液の量
精子濃度1 mLあたり 1,500万個 以上精子の数(濃度)
総精子数1回射精あたり 3,900万個 以上精液全体に含まれる精子の総数
総運動率(前進+非前進)40% 以上動いている精子の割合
前進運動率32% 以上しっかりと前に進む精子の割合
正常形態率(形態)4% 以上形が正常な精子の割合(Kruger基準)
pH値7.2 以上精液の酸性・アルカリ性の指標
精子生存率58% 以上生きている精子の割合

上記の基準値を満たすことで一般的に自然妊娠の可能性があると判断され、基準に満たない場合には医師が治療方針を提案する場合があります。

基準値を下回る要因はさまざまですが、WHOラボマニュアル第6版(2021年)を基に判断が行われます。

精液検査の主な検査項目

カウンセリングをする医者

精液検査では、不妊や生殖機能の状態を詳しく把握するため、さまざまな項目が調べられます。

これから主な検査項目について詳細にご案内していきますので、知識を深めて受診に備えてください。

精液検査の主な検査項目
  • 精液量
  • 精液濃度
  • 総精子数
  • 精子運動率
  • 精子正常形態率

精液量

精液量は、精液検査において基本となる項目です。

精液量が不足している場合、精子が女性の子宮に到達しにくくなるため、妊娠につながりにくい結果となることがあります。

不妊症の原因のうち約半数は男性側が関与するとされ、精液量の異常もその要因のひとつです。

精液濃度

精液濃度は、1mlあたりに含まれる精子の数を指し、妊娠率に大きな影響を及ぼします。

濃度が低い状態だと、精子が女性の生殖器に到達する数が減り、授精の可能性そのものが低下します。

不妊症の半数は男性側にも原因があるとされ、精液濃度のチェックは重要度が高い項目です。

精子形成障害や、その他の泌尿器系疾患が濃度低下の元になることがあります。

早期の検査と対策で、不妊治療の効果改善も期待できます。

総精子数

総精子数は、1回の射精に含まれる精子の総数であり、不妊治療全体の成功率に直結する重要なデータです。

不妊治療においては、総精子数が充分でなければ、人工授精や体外受精の機会を重ねても結果につながりにくく、カップルにとって精神的・経済的負担が増えてしまいます。

男性の検査を初期段階できちんと受けることが重要で、ご夫婦が一緒に治療に取り組むことで妊娠の可能性も高まります。

精子運動率

精子運動率は、前進運動できる精子の割合を示します。

運動率が高いほど卵子まで到達しやすく、受精のチャンスが大きくなります。

逆に運動率低下は自然妊娠の妨げになり、不妊と関係する要因です。

不妊治療においては単に数ではなく、動きの良い精子の存在も不可欠です。

精子正常形態率

精子正常形態率は、正常な形態を保つ精子の割合を表します。

形態異常の精子はDNAの不安定性や運動能力低下が生じやすく、自然妊娠の成功率にも影響を与えます。

正常な形態を持つ精子が15%以下だと自然妊娠が難しくなる傾向があり、形態評価は治療方針選択の大切な道しるべです。

検査結果は正常値かどうかだけでなく、医師による総合判断や治療ステップの判断材料になります。

精液検査を受けるタイミング

カレンダー

精液検査を受けるタイミングは、夫婦で避妊をせずに1年以上コンドームなどを使用せず性交渉を行っても妊娠しない場合が目安です。

ただ、近年では不妊が疑われた段階、または不妊治療を開始しようと決めた時点で迅速に検査を受けることが推奨されています。

なぜなら、精子も加齢に伴い質が低下し、早期発見・早期治療がより良い結果につながるためです。

精液所見の改善にも時間がかかることが多く、できるだけ早く現時点での精子の状態を把握し、必要な場合は速やかに治療を開始することが大切です。

現在は配偶者がいない方、将来の妊娠を考える方でも自発的に検査する男性が増えています。

精液検査の流れ

腕を組んでいる医者

精液検査を受ける際は、いくつかの段階を経て検査が進んでいきます。

ここからは、実際に精液検査がどのような流れで進むのかを詳しくご案内していきますので、安心してご確認ください。

精液検査の流れ
  1. 精液採取
  2. 精液を持参
  3. 診断

1.精液採取

精液採取は精液検査の最初のステップです。

確実で信頼できるデータを得るためには、適切な方法で精子を採取することが重要になります。

マスターベーションで採取する際は、清潔に保ち、採取前に適切な禁欲期間を守ることが大切です。

また、採取の際には専用の容器を利用し、汚染や混入がないよう慎重に行う必要があります。

2.精液を持参

精液検査の前には必ず準備すべきことがあります。

採取2日前から射精を控え、5日以上の禁欲も運動率低下につながるので注意が必要です。

精子は自宅や指定場所で採取し、2時間以内にクリニックへ持参することが求められます

採取した時間をしっかり覚えておくことも大切です。

3.診断

検査後は、医師から結果の説明が行われます。

正常値から外れている場合や精子の質・数に問題が認められる場合は、原因の説明や改善に向けたアドバイスも提供されます。

結果に応じて最適な治療方針を一緒に考えていきます。

精液検査での注意点

注意

精液検査を正確に受けるためには、いくつか知っておくべき注意事項が存在します。

ここからは、検査時に特に留意しておきたいポイントについてご紹介していきます。

精液検査での注意点
  • マスターベーションでの採取が必要
  • 量が少ないと検査できない
  • 採取後1~2時間以内に持ち込む必要がある
  • 2~7日以内の禁欲期間が必要
  • 検査よりも女性の排卵日を優先する

マスターベーションでの採取が必要

精液検査では、マスターベーションによる精液採取が必要となります。

性交渉による採取では、異物混入や採取量不足のリスクがあるため、検査精度を高めるため必ず専用容器に採取が求められます。

量が少ないと検査できない

精液量が極端に少ない場合、十分な検査ができず正確な結果を得られません

そのため検体の採取方法や禁欲期間など事前の注意が必要です。

少量しか採取できなかった場合は、医療機関へ相談しましょう。

採取後1~2時間以内に持ち込む必要がある

自宅で採取した精液は基本的に2時間以内に医療機関へ提出する必要があります。

採取から時間が経過すると、精子の運動性や機能に変化が生じて正しい所見が得られなくなる場合もあるため、迅速に提出することが大切です。

もし指定時間に間に合わない不安があれば、医師に事前相談してください。

2~7日以内の禁欲期間が必要

精液検査の前には、通常2~7日間の禁欲期間が必要とされています。

これは一定の精液量と精子の質を確保し、正確なデータを得るために推奨されています。

長すぎる禁欲や極端に短い禁欲はデータの信頼性を損なう可能性があるため、案内された期間を守ることが重要です。

検査よりも女性の排卵日を優先する

精液検査は男性側の妊娠力を把握するうえで重要ですが、自然妊娠を目指す場合は、女性の排卵日に合わせてタイミングを取ることが最優先です。

排卵日は受精の可能性が最も高い時期であり、検査のために射精を控えすぎると妊娠のチャンスを逃す恐れがあります。

検査は排卵期を避けた時期に行うなど、スケジュールを調整して進めることが大切です。

まとめ

精液検査は不妊治療の現場でとても重要な検査であり、無理なくスムーズな妊娠を目指すためにも早期に受けておくことが大切です。

男性側の不妊原因を知ることで、夫婦で正しい治療方針を決定できるようになります。

状態に応じて適切な検査・診断・治療が受けられるよう、まずは早めにクリニックへの相談や予約をしてみることをおすすめします。

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