
妊娠を望む多くのカップルにとって、不妊やその原因への不安は身近な悩みです。
近年、日本でも不妊症の割合が増加傾向にあり、男女ともに原因となる疾患や障害、生活習慣の影響が話題となっています。
不妊症は、卵巣や卵管、子宮の異常、ホルモン分泌異常、精子の運動障害や精巣機能の低下など、さまざまな要因が複雑に関係します。
本記事では、不妊症の定義や主な原因、男女別の特徴、必要な検査や治療、早期相談がなぜ重要なのか、具体的に解説します。
不妊に悩む方が適切な選択をし、希望する出産への第一歩を踏み出せる情報を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
- 不妊症とは?
- 不妊症の原因
- 不妊症の対処法
不妊症とは?

不妊症とは、子作りを頑張り避妊をしていないにもかかわらず、1年以上妊娠に至らない状態をいいます。
日本では、最近4.4組に1組の夫婦が何らかの不妊症の検査や治療を受けているとの調査結果があり、不妊は誰にでも起こる問題です。
不妊症の背景には、女性だけでなく男性側にも原因があるため、カップルで一緒に医療機関へ相談することが重要になります。
検査や治療を行うことで、原因が特定しやすくなり、妊娠への近道につながります。
不妊の悩みに直面したなら、早めの受診が大切です。
不妊症が定義される基準
不妊症は、健康な男女が妊娠を望み、1年以上避妊せずに性交渉を継続しても妊娠しないことを指します。1
年間で約90%のカップルが妊娠しますが、反対に約10%は不妊とされます。
不妊の原因は年齢だけでなく、男性・女性どちらにも存在し、複数の要因が絡むことも珍しくありません。
検査や治療は、早期に始めることで妊娠の可能性が高まります。
妊娠を希望し、「不妊かも?」と感じた場合は専門医への相談やスクリーニング検査も視野に入れましょう。
【男性編】不妊症の原因

男性不妊の原因にはさまざまなものがあり、今から主な原因について解説していきます。
男性側にも医療的な検査や治療が必要となる場合もありますので、悩んだ際は早めの相談がおすすめです。
- 造精機能障害
- 精路通過障害
- 性機能障害
- ホルモン異常
- 生活習慣・環境要因
造精機能障害
男性不妊の中でも造精機能障害は大きな割合を占めます。
精巣で精子がうまく作られないことが主な特徴です。
主な原因として、
- 精索静脈瘤
- 先天的要因や染色体異常
- 無精子症・乏精子症
などが挙げられます。
精索静脈瘤は血流異常により精巣の温度が上がり、精子の質や数が悪化します。
染色体異常による場合は、根本的な治療が難しいことも多く、無精子症や乏精子症も受精の可能性に影響します。
精路通過障害
精路通過障害は精子が精巣で作られても、射精時に体外へうまく出せない状態を指します。
主な原因は閉塞性無精子症です。
精管や精嚢、射精管のいずれかが閉塞すると、精液中に精子が含まれなくなります。
感染症や手術の後遺症、先天的な器質的異常なども関係します。
精液検査で精子が確認できない場合は、この障害が疑われることが多いです。
性機能障害
性機能障害は、妊娠に必要な性交自体が困難になる状態です。
主に勃起不全(ED)や逆行性射精が原因です。
勃起不全(ED)は精神的要因、生活習慣、年齢、疾患などさまざまな要因によります。
逆行性射精は射精時に精液が膀胱側へ流れてしまう状態で、糖尿病や手術歴などが関与します。
日常生活や疾患管理も重要です。
ホルモン異常
男性の生殖機能に関わるホルモンの分泌異常も不妊の要因となります。
下垂体や視床下部の障害などが主な原因です。
これらの脳から分泌されるホルモンは、精巣機能や精子の形成・成熟に不可欠です。
そのため分泌量の異常や伝達路の障害がある場合、精子の数や運動性の低下を引き起こします。
生活習慣・環境要因
喫煙や過度の飲酒、肥満、ストレス、運動不足といった生活習慣の乱れは、精子の質や量、運動率を低下させます。
加えて、長時間の高温環境や有害物質への曝露なども精巣機能に悪影響を及ぼします。
健康な生活習慣の維持や環境対策は不妊治療の一部として重要です。
【女性編】不妊症の原因

女性不妊の原因も多岐にわたり、これから主要な原因について紹介していきます。
それぞれの原因を知ることで、早期に適切な治療につなげられる可能性があります。
- 排卵障害
- 卵管障害
- 子宮の異常
- 頸管・免疫の異常
- 生活習慣・ストレス
- 加齢
排卵障害
排卵がスムーズに行われないことで妊娠が難しくなる場合が多いです。
代表的な原因には
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 高プロラクチン血症
- 黄体機能不全
などがあります。
ホルモンバランス異常やストレス、体重の急激な増減なども発症に関係します。
排卵を促すホルモン治療や生活習慣の改善が効果的なケースも多いです。
卵管障害
卵子と精子が出会う場所となる卵管のトラブルも不妊の一因です。
- 卵管閉塞・卵管癒着
- 子宮内膜症による癒着
などが主な原因です。
クラミジア感染や骨盤内炎症なども卵管の通過障害を引き起こします。
卵管性不妊は体外受精など高度医療によって妊娠を目指せる場合もあります。
子宮の異常
子宮の構造や機能に異常がある場合も不妊症の原因になります。
代表的な疾患は、
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮奇形
などです。
子宮筋腫やポリープは物理的に受精卵の着床を妨げることがあり、奇形は生まれつきの形態異常のことを指します。
手術や薬物治療で改善を図るケースもあります。
頸管・免疫の異常
精子が子宮に入る際の通路となる頸管の働きや、精子に対する免疫異常が不妊につながります。
- 頸管粘液異常
- 抗精子抗体
などが主な原因です。
頸管粘液の分泌異常は月経周期やホルモンバランスにより変動し、抗体の存在で精子が卵管に進めない場合もあります。
医療による補助的な治療も行われます。
生活習慣・ストレス
不規則な生活や過度なストレス、栄養バランスの乱れは、ホルモン分泌に影響し不妊症の一因になります。
過度なダイエットや極端な体重変動、運動不足も排卵障害を引き起こす原因です。
健康な生活習慣の維持が妊娠しやすい身体作りにつながります。
加齢
年齢による卵巣機能の低下は女性の不妊で大きな割合を占めます。
卵子の数や質は年齢とともに減少・劣化していくため、特に35歳以降は妊娠率が下がりやすい傾向です。
加齢に伴うホルモン分泌の変化や子宮・卵巣の疾患リスクの増加も影響してきます。
不妊症かも?と思った時の対処法

不妊症の疑いを感じた際にどのように対処すればよいか、今からおすすめの取り組みについて紹介します。
早めのアクションが妊娠への近道となるため、参考にしてみてください。
- 基礎体温をつけて排卵の有無を確認する
- 月経周期の乱れがないかチェックする
- 婦人科・不妊専門クリニックを早めに受診する
- 泌尿器科・男性不妊専門クリニックを受診する
- 生活習慣の見直し
- 性交の頻度・タイミングを見直す
基礎体温をつけて排卵の有無を確認する
基礎体温を毎日測定し記録することで、自分の排卵の有無や周期の規則性が確認できます。
排卵期には体温が低温相から高温相に移行し、ホルモン分泌リズムもわかりやすくなります。
基礎体温グラフが二相性になっていれば排卵の可能性が高いです。
異常がみられる場合は、医療機関で専門的な不妊検査を受ける目安にもなります。
月経周期の乱れがないかチェックする
月経周期が25〜38日程度で定期的であれば、排卵やホルモン分泌の状態が安定しているケースが多いです。
しかし、月経周期が短すぎたり長すぎたり、出血量や期間が極端に異なる場合、排卵障害や婦人科疾患の疑いがあります。
周期の乱れが長く続く場合は、不妊症を疑い婦人科への相談をおすすめします。
婦人科・不妊専門クリニックを早めに受診する
不妊症の原因には排卵障害、卵管障害、精子異常などさまざまな要因があり、その頻度が高いものは「不妊症の3大原因」と呼ばれます。
これらは1つだけでなく、複数の原因が絡み合う場合も多いです。
原因特定には各種検査が必要となるため、早めの婦人科や不妊専門クリニック受診が重要です。
泌尿器科・男性不妊専門クリニックを受診する
不妊症の三大原因には排卵障害、卵管障害、精子異常が挙げられます。
男性側の原因も多く、不妊はカップル双方の協力が不可欠です。
泌尿器科や男性不妊専門クリニックでの精液検査・ホルモン検査を受けることで、精子の数や運動性の異常、造精機能障害等の特定に役立ちます。
原因が複数絡む場合もあるため早期受診が勧められます。
生活習慣の見直し
禁煙・節酒・適度な運動・バランスの良い食事など健康的な生活習慣は不妊症予防や治療の基本です。
肥満や極端な体重減少、ストレス過多はホルモン分泌や生殖機能に悪影響を及ぼします。
そのため、日々の生活を見直すことから始めましょう。
性交の頻度・タイミングを見直す
排卵日の前後に性交を持つことで、妊娠の確率が高くなります。
タイミング法と呼ばれるこの方法は、不妊治療としてもよく用いられます。
夫婦で協力し合い、適度な頻度で性生活を送ることが大切です。
男性のための不妊検査について

男性不妊の原因特定や治療に重要な検査について、これから具体的に紹介していきます。
精子の状態や生殖機能を科学的に把握することが妊娠への第一歩です。
- 感染症検査
- 精液検査
感染症検査
男性不妊の原因として性感染症は見逃せません。
クラミジアや淋菌などによる感染症は精路の炎症や閉塞を招くことがあり、検査は重要です。
血液検査や尿検査で感染の有無を調べ、必要に応じて治療を行います。
早期発見・治療が将来的な生殖機能への悪影響を防ぎます。
精液検査
精液検査は、マスターベーションで採取した精液から精子の数や運動率、形態などを調べる検査です。
不妊症の診療を行う産婦人科や泌尿器科で簡単に実施できます。
精子の運動障害や数の減少が判明した場合は、精索静脈瘤など生殖器疾患が隠れていないか専門医の診察も必要となります。
女性のための不妊検査について

女性が妊娠しにくいと感じた時に実施する不妊検査について、今から順番に解説していきます。
不妊症でどのような検査が必要なのか、確認しておきましょう。
- 内診・経腟超音波検査
- 子宮頸がん検査(子宮腟部細胞診)
- クラミジアPCR検査
- 子宮卵管造影検査
- ホルモン検査
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査(採血)
- 感染症検査(採血)
- ヒューナー検査(性交後検査)
内診・経腟超音波検査
婦人科的な診察(内診)や腟からの超音波検査で、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮内膜ポリープ・クラミジア感染症などを調べます。
不妊症の原因となる疾患の発見に有効です。
異常が疑われる場合にはMRI、子宮鏡、腹腔鏡検査も追加されることもあります。
子宮頸がん検査(子宮腟部細胞診)
内診や経腟超音波によって子宮などの異常が見つかった際や、婦人科疾患の早期発見目的で行われるのが子宮頸がん検査(子宮腟部細胞診)です。
子宮筋腫や内膜ポリープ、クラミジア感染症などの疾患も同時に診断できる場合があります。
必要に応じてMRIや子宮鏡など追加検査も行われます。
クラミジアPCR検査
クラミジア感染は卵管癒着による卵管障害の主要な原因となるため、不妊検査の一つとなっています。
採血や分泌物を用いた遺伝子検査(PCR法)で行い、陽性となれば抗生剤で速やかに治療します。
早期発見と治療により将来的な生殖機能低下を防止可能です。
子宮卵管造影検査
子宮や卵管の形の異常や卵管閉塞の有無を調べる検査です。
造影剤を子宮腔内に入れ、X線透視下で撮影します。
卵管通過性障害がある場合は、体外受精等の検討材料となります。
ホルモン検査
女性ホルモンや甲状腺ホルモン、プロラクチンなどの内分泌ホルモンのバランスを採血で調べる検査です。
月経周期にあわせて複数回実施され、排卵機能や卵巣予備能、その他全身状態まで把握します。
不妊症の治療方針決定に不可欠です。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査(採血)
AMH検査は、卵巣内の卵子の在庫数(卵巣予備能)を推測するために重要な指標です。
採血で簡単に行え、加齢に伴い値は低下します。
卵巣機能評価や治療計画立案に役立つため、不妊治療の初期段階でよく実施されます。
感染症検査(採血)
女性向けの不妊検査のひとつとして、B型・C型肝炎やHIV、梅毒など感染症の有無を調べる採血検査が含まれます。
感染症は母体や胎児に影響を及ぼすリスクがあるため、妊娠前にチェックしておくことが大切です。
ヒューナー検査(性交後検査)
性交後の頸管粘液を採取し、精子が子宮へ進入できているか、運動性などを観察する検査です。
夫婦のタイミングや頸管粘液の質、精子の運動率など複合的な視点で受精障害の原因を探ります。
まとめ
不妊症は男性・女性ともに原因があり、カップルで検査・治療を行うことが大切です。
生活習慣や医療的な対応で改善が期待できる場合も多く、早期の相談・受診がその後の結果を左右します。
不妊で悩んだときは、まずパートナーと話し合い、できる対策から始めてみましょう。
少しでも不安を感じたら、専門クリニックでご相談をおすすめします。