
妊活を考えるカップルが増えている中、男性側の役割にも大きな注目が集まっています。
不妊症の約半数は男性に原因があるとされ、精子の状態や生活習慣の影響が妊娠率を大きく左右します。
普段の運動や睡眠、喫煙や飲酒といった毎日の習慣、ストレスや栄養バランスの乱れは、精子の質を低下させるリスクがあるので注意が必要です。
だからこそ、男性も積極的に身体の状態をチェックすることや検査を受けること、問題があれば専門クリニックへの相談が重要です。
この記事では、男性が妊活ですべきことについてわかりやすく解説。
妊娠を目指すパートナーと一緒に、健康で前向きな妊活に役立つ情報を紹介します。
- 男性の妊活の必要性
- 男性が妊活ですべきこと
- 男性が妊活する時の注意点
- 男性不妊の原因
男性の妊活の必要性について

妊活は女性だけのものではなく、男性も積極的に取り組むことが重要です。
赤ちゃんを授かるには、精子と卵子の質がともに良好であることが条件となり、生活習慣や年齢など男性の側にもたくさんの影響要因があります。
晩婚化にともない子どもを希望する年齢が高くなっている今、男性側の精子の質や運動率も妊娠の可否に大きく関与します。
特に、精子や卵子は年齢とともに質が低下し、自然妊娠が難しくなるリスクが上がるため、早めから妊活に参加し健康的な習慣を維持することが求められます。
生活習慣の見直しや医療機関での検査・相談を積極的に行うことで、不妊の原因を早期に把握し必要な治療を進められる点もメリットです。
子どもの健やかな成長や家族の未来を見据え、男性も妊活を自分ごととして捉え行動することが大切となります。
夫婦で協力し合って妊活に取り組み、医学的知見も活かしながらより良い妊娠・出産を実現しましょう。
男性が妊活ですべきこと

男性が妊活を始める際に心がけるべきポイントや取り組む方法について、ここからわかりやすく紹介していきます。
具体的な検査や生活習慣の見直し、パートナーとの連携を意識して進めることが妊娠への近道となりますので、ぜひ参考にしてください。
- 精液検査を受ける
- 栄養バランスの良い食事をとる
- 適度な運動をする
- 禁煙・節酒を徹底する
- 睡眠をしっかりとる
- 睾丸を温めすぎない
- ストレスをためない
- 夫婦で情報共有をする
- 男性不妊専門クリニックを受診する
- 妊活サプリを検討する
精液検査を受ける
男性が妊活を始めるにあたり、精液検査は欠かせません。
精子が元気で妊娠可能な状態にあるかどうかは見た目だけではわからず、専門の検査を受けて初めて確認できます。
検査では
- 精液の量
- 精子数
- 運動率
などを詳細にチェックします。
これによって自然妊娠が望めるかどうかの判断材料となり、必要に応じて人工授精や体外受精などの治療方法を選択することも可能です。
妊活を始める段階で一度精液検査を受けることで、無駄な時間や費用をかけず効率的に妊娠を目指せます。
栄養バランスの良い食事をとる
精子の質や精液量の改善には、バランスの良い食事が欠かせません。
特に
- 亜鉛
- 葉酸
- アルギニン
- ビタミン各種
などの栄養素は精液や精子の生成に役立つとされています。
例として、亜鉛は牡蠣やうなぎ、葉酸はブロッコリーや枝豆、アルギニンは大豆や鶏肉、ビタミンCはブロッコリーやピーマンに豊富です。
対して、精子の生成を妨げる加工食品や過剰な脂質、糖質の多い食品は控えましょう。
食事で摂取できない栄養素はサプリメントの活用を検討するのもおすすめです。
適度な運動をする
適度な運動は男性の妊活にとって重要です。
運動によってテストステロンの分泌が促されるため、精子の形成や性機能維持に良い影響があります。
特に大きな筋肉を使う運動が効果的ですが、やり過ぎると活性酸素による悪影響が出る可能性もあるので、強度には配慮しましょう。
運動不足や肥満は精巣への血流悪化や精子の質低下に直結します。
日々のウォーキングや軽い筋トレを取り入れて適正体重を維持しましょう。
禁煙・節酒を徹底する
喫煙は精子数や運動率低下だけでなく、奇形率増加や勃起不全(ED)のリスクも引き上げます。
妊活においてはそうした悪影響を回避するため、禁煙は必須です。
さらに、パートナーの受動喫煙によって女性の健康やお腹の赤ちゃんへのリスクも増大します。
飲酒もほどほどに抑えましょう。
健康的な妊娠のため夫婦そろって禁煙・節酒に取り組むことが大切です。
睡眠をしっかりとる
質の良い睡眠は、ストレス緩和や疲労回復だけでなく、精子の数や運動率に直接影響します。
1日7~8時間程度の睡眠時間を目安に確保することが賢明です。
睡眠が長すぎても短すぎても精子の状態が悪化するとの研究もあり、規則正しい生活リズムを心掛けましょう。
日々の忙しさの中でも、妊活の一環として十分な休息を確保する意識が重要です。
睾丸を温めすぎない
睾丸周辺の温度が高くなると、一時的に精子形成に悪影響を及ぼします。
- 長風呂
- サウナ
- 締め付けの強い下着の着用
- 長時間の座り姿勢
- 膝上でのパソコン作業
などは控えましょう。
生活習慣の中で睾丸の温度管理を意識することで、精子の質や数の低下リスクを軽減することができます。
ストレスをためない
ストレスは男性ホルモン(テストステロン)の分泌を抑制する恐れがあり、精子形成に悪影響をもたらすことがわかっています。(※①)
また、強いストレスは勃起障害を招く可能性もあり、性行為自体が困難になる場合も考えられます。
日々のストレスをためこまない工夫と、リラックスできる時間の確保を意識することが、健康な妊活には不可欠です。
(※①)急性ストレスが認知・感情に及ぼす影響―コルチゾールを中心として―
夫婦で情報共有をする
妊活を進める上でパートナーとの話し合いと情報共有はとても大切です。
お互いの考えや妊活への熱量に違いがあると、誤解や不仲の原因になる場合も少なくありません。
事前に妊活への意向や予算、頻度なども話し合い、夫婦で共通のゴールを持つことが理想です。
自分の気持ちを伝えることで、信頼や協力体制が強まります。
定期的なコミュニケーションの場を設けて進めましょう。
男性不妊専門クリニックを受診する
不妊が心配な方は男性不妊専門クリニックで適切な検査や治療方針を相談するのがおすすめです。
専門クリニックでは、精索静脈瘤の日帰り手術など、高度な治療も対応可能です。
夫婦で協力して妊活する姿勢が何より重要で、医療機関の助けを借りることも成功への近道となります。
悩みや不安がある方は、早めの受診を検討してください。
妊活サプリを検討する
妊活中の男性には、栄養バランスの良い食事と合わせてサプリメントの利用も効果的です。
特に亜鉛やビタミン類は精子の質や量を高める働きがあり、現代の食事だけでは十分な摂取が難しい場合には積極的な活用が推奨されます。
亜鉛の摂取量が満たされていない男性も多く、不足解消のためにサプリを選択することが望ましいです。
必要な栄養素については医師に相談して決めるのが安心です。
男性が妊活する時の注意点

男性が妊活を進める際に注意したい点について、これから順を追って詳しく解説していきます。
健康的な妊活を成功させるためには、適切な生活習慣や行動を心がけ、リスク要因を避けることが欠かせませんので、ぜひ参考にしてください。
- 無理なダイエットや筋トレを避ける
- 薬の服用は医師に相談する
- 排卵日に合わせてタイミングをとる
- 過度な性行為や禁欲を避ける
- カフェインを摂取しすぎない
- 肥満状態に注意する
無理なダイエットや筋トレを避ける
男性においても肥満は不妊症の大きなリスクとなるだけでなく、急激なダイエットや過度の筋トレも体調を崩しがちです。肥満体質の男性は精巣のまわりの脂肪が多く、熱がこもりやすいことで精子形成に悪影響が及びます。また、男性ホルモンであるテストステロンが減り、精子数や精液量の減少につながっています。BMIが25を超えている人は生活習慣を見直し、無理なくBMI25以下の範囲を目指すと良いでしょう。健康的な身体づくりが妊活成功のカギです。
薬の服用は医師に相談する
市販薬や処方薬の中には、男性の生殖機能や精子の質に悪影響を与えるものが含まれている場合があります。特に長期間の服用や複数の薬を同時に使用するケースでは、副作用として精液の量が減る、運動率が下がるなどの報告もあります。自己判断での薬の使用は避け、妊活中や妊娠を希望する場合は必ず医療機関の医師に相談しましょう。安全に治療しつつ健康な妊活を進めるためにも、プロのアドバイスを受けてください。
排卵日に合わせてタイミングをとる
妊娠の可能性を高めるには、女性の排卵日付近に合わせて性行為を行うことが大切です。精子の生存期間や卵子の受精可能な時間を考慮すると、タイミングを合わせることで妊活の効率が上がります。パートナーと話し合い、排卵予測のアプリや基礎体温の計測なども活用して最適なタイミングを見極めましょう。不妊治療に進む場合も、正しいタイミング法が重要な基礎となります。
過度な性行為や禁欲を避ける
精子の質を保つためには、過度な禁欲や頻繁すぎる性行為のどちらも避けたほうがよいとされています。WHOでは4日以上の禁欲で精子の質低下や死滅精子の増加がみられると発表しています。一方で、毎日射精をすると精液量や濃度が下がりやすくなり、望ましい状態を維持できません。週1~2回程度の定期的射精が精子所見の改善には効果的です。自身の状態や不妊治療の方法によっても最適な頻度は異なるため、医師と相談して決めましょう。
カフェインを摂取しすぎない
コーヒーやエナジードリンクのようなカフェイン飲料を過剰に摂取すると、精液所見が悪化することが研究でも示されています。過度のカフェイン摂取は精子だけでなく、全体の健康にも良くないため注意が必要です。妊活期間中はコーヒー・緑茶・エナジードリンクなどの量を意識して調整し、必要に応じてカフェインレス飲料を選ぶこともおすすめします。
肥満状態に注意する
肥満状態の男性は、精巣に脂肪が多く熱の影響で精子が損傷しやすくなります。その結果、男性ホルモンの低下や精子数・精液量の減少を招きやすいことがわかっています。肥満はBMI25以上の人が該当しますので、無理なダイエットは避けつつも健康的な生活習慣でBMI25以下を目指しましょう。体重・身長を定期的に測り、自分のBMI値も把握して管理することが大切です。
不妊の原因の半分は男性が原因

不妊症の原因の約半分は男性にあることが明らかになっています。
女性側の問題だけでなく、精子の数や運動率、質の低下など、男性側にも不妊の主要な要因があるため、妊活には男女ともに検査や治療が重要です。
今後は男性不妊の具体的な原因や、造精機能障害、精路閉塞、生活習慣の影響などについて詳しく解説していきますので、ご自身やパートナーの妊活を始める際の参考にしてください。
- 乏精子症
- 精子無力症
- 精索静脈瘤
- ホルモン異常
- 先天的な精路閉塞や異常
- 感染症による精路障害
- 過度なストレスや生活習慣の乱れ
- 喫煙・飲酒などによる精子の質の低下
- 加齢による精子の老化
乏精子症
乏精子症は、精液中の精子の数が極端に少ない状態を指し、男性不妊の主な原因です。
原因の大部分は造精機能障害であり、男性不妊の82.4%を占めています。
精子がうまく作られていない場合、精子の数や運動率の低下、奇形精子の増加などの問題が起きるため、妊娠の可能性が大きく下がることが知られています。
実際、性交渉のタイミングが良くても、精子形成の段階に異常があれば自然妊娠は難しい場合が多いです。
生活習慣やストレス、加齢が精子形成に悪影響を及ぼす場合もあるため、早めに専門クリニックでの検査や治療を検討することが勧められます。
精子無力症
精子無力症は、精子の運動率が通常より著しく低い状態を指します。
この症状も男性不妊の主因であり、造精機能障害の一部に含まれます。
精子形成の過程で運動能力が損なわれると、卵子と出会う確率が大きく下がり、結果的に妊娠の難易度が上がるケースが多いです。
精子の運動率低下の背景には、生活習慣の乱れや喫煙、ストレスなど複数の要因が関係しています。
具体的には、精子が全く作られない状況や、一般男性より極端に精子数が少なくなる状態をともなうこともあります。
毎日の生活環境を見直しつつ、クリニックでの検査・相談を通じて原因解明と治療を進めることが必要です。
精索静脈瘤
精索静脈瘤は、精巣の周囲の静脈が拡張することで血流が停滞し、精液や精子の質に悪影響を与える病気です。
進行性の疾患のため、放置すると精液所見の悪化や精子数・運動率の低下を招き、不妊の要因となります。
治療法には日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドがあり、逆流静脈のみ結紮・切離することで正常な組織の温存ができます。
逆流していない動脈やリンパ管・神経を残すことで合併症リスクが低く、再発も少ない点が大きなメリットです。
再発例にも対応でき、多くの泌尿器科医からも推奨されています。
ホルモン異常
男性の妊活において、ホルモン異常は重要な不妊原因のひとつとなります。
精子を作る精巣そのものに問題があると、精子形成機能(造精機能)が低下し、精液中の精子数や質にも悪影響が出ます。
極端に精子が少なくなる無精子症や、精子自体がまったく確認できない場合もあるので注意が必要です。
無精子症には精子が通る道が閉塞する「閉塞性」と精子そのものの産生障害である「非閉塞性」があります。
また、精巣がんの治療や停留精巣といった先天的異常も、精子の質や運動率低下の原因となり得ます。
先天的な精路閉塞や異常
先天的な精路閉塞や異常は、不妊症の原因の一つです。
精子が精巣で作られていても、射精時に精管など通り道が塞がっていたり狭くなっていたりするため、体外へ精子が出せない状態になります。
この精路通過障害により、精液中に精子がほとんど含まれないか、極端に少ないといった異常が発生します。
主な原因として、先天的な精管欠損や加齢、ストレス、尿道炎、前立腺嚢胞、逆行性射精、過去の手術などが挙げられます。
自覚症状がない場合も少なくなく、検査や医師の診断を受けなければ気づけないことも多いです。
無精子症などが判明しても、検査で精子が存在する場合もありますので、早期の専門的な診断が重要です。
感染症による精路障害
感染症による精路障害は、男性不妊の原因の一つです。
クラミジアや淋菌などの性感染症が精巣上体炎や前立腺炎を引き起こすと、炎症によって精子の通り道である精管や精巣上体が狭くなったり閉塞したりします。
その結果、精子が射出されにくくなり、無精子症や乏精子症を招くことがあります。
自覚症状が軽い場合も多く、気づかないうちに不妊の原因となるため、性感染症の予防や早期治療、定期的な検査が重要です。
過度なストレスや生活習慣の乱れ
男性においても過度なストレスや生活習慣の乱れは、精子の質や運動率の低下など不妊症に直結するリスク要因です。
不規則な生活や偏った食事、十分な睡眠が取れていない状態は、ホルモンバランスや精子の形成過程へ悪影響を及ぼします。
近年の医療研究でも、ストレスや不安、寝不足が男性生殖機能にマイナスの影響を及ぼすことが確認されています。
妊活を始める際、パートナーとともに健康的な生活リズムやバランスの良い食事、適度な運動を意識することで、妊娠の可能性を高めることが可能です。
喫煙・飲酒などによる精子の質の低下
喫煙や過度な飲酒は精子の数や運動率、質に悪影響を及ぼす代表的な生活習慣であり、男性不妊の要因となっています。
日常的にタバコを吸うことで造精機能障害が進行しやすく、気付かぬうちに精子数や運動性が低下してくることもあります。
妊活中は元気で損傷の少ない精子を維持する必要があるため、禁煙・節酒がとても大切です。
さらにパートナーへの受動喫煙の悪影響も考慮し、夫婦で協力しながら生活習慣改善に努めましょう。
加齢による精子の老化
男性は加齢と共に精子の質が下がることが分かっています。
30代後半から精子のDNA損傷率が上昇し、運動率や受精能の低下だけでなく、流産率や子どもの健康リスクとも関係することが知られています。
特に自閉スペクトラム症など、子どもの発達障害との関連も最新の研究で明らかです。
さらに、加齢により男性ホルモン・テストステロンの分泌も低下し、性機能障害や精子形成能力の減退を招きます。
自分の年齢や健康状態を確認し、早めに泌尿器科や男性専門クリニックに相談することが推奨されます。
まとめ
不妊症は女性だけの問題ではなく、男性側にも原因があるケースが多いことが分かっています。
パートナーと協力して生活習慣や健康管理に取り組み、必要に応じて検査・治療を受けることで、妊娠の可能性が高まります。
妊活はお互いの力が合わさって初めて実を結ぶものです。
医療機関のサポートや正しい情報の活用も大切にしながら、男女ともに前向きな気持ちで妊活を進めましょう。