
妊活や将来の妊娠を考え、精液や精子の質が気になる男性は多いもの。
精液量や状態は体の健康や生活習慣、年齢、ストレス、精巣の機能などさまざまな要因で変化します。
精液量が十分でないと妊娠しにくくなったり、不妊の原因となる場合もありますので注意が必要です。
この記事では、精液の量に関する基本的な知識から、精液量を増やす方法など解説します。
精液量について気になる方はぜひ参考にしてください。
- 妊娠における精液量の重要性
- 精液量が少ない原因
- 精液量の増やし方
- 精液量を増やす際の注意点
目次
妊娠には精液量が重要

妊娠を成立させるためには、精液の量と精子の質が非常に大切です。
精液の大部分は液体である「精漿」であり、受精に必要な精子は全体の1〜5%ほどしか含まれていません。
男性は思春期以降、体内で日々新しい精子が作られていますが、「射精できれば生殖能力が十分」とは限りません。
実際には、精液中の精子の質と量が妊娠率に強い影響を与えます。
もし精子の数が極端に少なかったり、運動量が低かったり、形態に異常があれば、自然妊娠の確率は著しく低下します。
精子の運動量や機能、さらには形態異常も不妊の重要な原因です。
これらの精液や精子の状態は、不妊専門クリニックや医療機関での検査でしっかり確認できます。
一般的な男性の精液量
男性が1回の射精で出す精液量は平均しておよそ3mlです。
ただし年齢や健康状態、性的な興奮の度合いによって個人差があります。
精液量が3ml以下でも自然妊娠は可能です。
2021年のWHOの基準では、1.4ml以上であれば自然妊娠が十分期待できます。
精液量が多ければ良いというわけではなく、含まれる精子の濃度や運動率が低ければ妊娠しづらくなります。
正常な精液量の基準値(WHO基準)
項目 | 基準値 | 説明 |
---|---|---|
精液量(総量) | 1.5 mL以上 | 射精された精液の全体の量。これが少ない場合、精嚢や前立腺の機能低下がある可能性があります。 |
精子濃度 | 1mLあたり1,500万個以上 | 精液1mL中に含まれる精子の数。これが少ない場合、精子の生成に問題がある可能性があります。 |
総精子数 | 3,900万個以上 | 射精された精液全体に含まれる精子の総数。濃度と量の両方が影響します。 |
精子運動率(総運動率) | 40%以上 | 動いている精子の割合(前進運動、非前進運動を含む)。運動能力が低いと受精が難しくなります。 |
前進運動率 | 32%以上 | 前進する運動をしている精子の割合。受精能力に直接関係します。 |
正常形態率 | 4%以上 | 正常な形態を持つ精子の割合(頭部や尾部に異常がないもの)。形態異常が多いと受精が難しくなります。 |
pH値 | 7.2~8.0 | 精液の酸性度。pHが低すぎる(酸性)場合、精子の生存に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
液化時間 | 60分以内 | 射精後、精液が液状化するまでの時間。液化が遅い場合、精子が動きにくくなります。 |
白血球数 | 1mLあたり100万個未満 | 白血球が多い場合、感染症や炎症の可能性が考えられます。 |
精子生存率(生存精子の割合) | 58%以上 | 精液中で生存している精子の割合。生存率が低いと受精能力が低下します。 |
WHO(世界保健機関)の基準によると、正常な精液量は1.5mL以上、精子濃度は1mLあたり1,500万個以上、総精子数は3,900万個以上が目安です。
また、精子運動率は40%以上、正常形態率は4%以上、pH値は7.2~8.0が基準とされています。
液化時間は60分以内、白血球数は1mLあたり100万個未満が健康的とされます。
これらの基準は、生殖能力を評価する際の最低値であり、基準値を下回っていても妊娠可能な場合があります。
不安がある場合は医師に相談しましょう。
精液量が少ない原因

精液量が少ないケースにはさまざまな理由があります。
これからその主な原因についてご紹介します。
- 生理的要因
- ホルモンの問題
- ライフスタイルや環境的要因
- 疾患や医学的要因
- 頻繁な射精
生理的要因
精液量の低下は年齢や体質、加齢によるホルモン分泌の変化など、生理的な要因でも起こります。
年齢を重ねると精巣の機能や男性ホルモンの分泌量が低下し、精液量が少なくなりやすいです。
また、思春期直後の若年男性や、高齢男性では自然と精液の量や精子の濃度に差が出てきます。
体内の血流や酸素供給も関係しており、体調やストレス状況、生活リズムの影響も受けます。
ホルモンの問題
男性ホルモンであるテストステロンは、精巣で作られ精子生成や精液量に重要な役割を果たします。
年齢が上がるとホルモン量も減少し、それに伴い精液量や精子数も下がります。
筋肉質な体型や活発な身体機能の維持にも男性ホルモンは欠かせません。
精液量を維持できると、見た目や活動性の維持にもプラスに働くため、ホルモンバランスが乱れた場合は医師に相談することが大切です。
ライフスタイルや環境的要因
不規則な睡眠や喫煙・肥満など、生活習慣や環境による要因が精液量低下に深く関与しています。
中国の研究によると1日7〜7.5時間の睡眠が良好な精液状態に関係しており、6時間半未満や9時間超の睡眠では精子数が大きく減少します。
WHOによるメタ分析によると、喫煙が精液量や精子の質・数の低下に悪影響を与えることは明らかです。
十分な睡眠と禁煙が精液量・精子の質保持に役立ちます。
疾患や医学的要因
精子が減少する原因には、さまざまな疾患や医学的要因が関係します。
代表的なものに精索静脈瘤があり、精巣の温度上昇によって精子の生成が妨げられます。
また、ホルモン異常(テストステロンや性腺刺激ホルモンの異常分泌)や、精管閉塞(精子の通り道が塞がる)、前立腺炎や精嚢炎などの感染症も精子が減少する原因です。
さらに、抗がん剤治療や放射線治療などの副作用、糖尿病や肥満などの慢性疾患も精子減少に影響を与えることがあります。
これらの問題が疑われる場合は、専門医の診察が必要です。
頻繁な射精
頻繁な射精は、精液量が一時的に少なくなる原因の一つです。
射精の間隔が短いと、精嚢や前立腺などで精液が十分に蓄えられる前に排出されるため、量が減少します。
また、精子濃度も下がることがあり、妊活中の場合は排卵日に合わせて射精の間隔を2〜3日空けることが望ましいとされています。
精液量の増やし方

精液量は生活習慣や健康状態によって変化します。
これから、おすすめの精液量増加策についてご紹介します。
- 栄養素を意識した食事を摂る
- 適度な運動を取り入れる
- 良質な睡眠を確保する
- ストレスを減らす
- アルコールや喫煙を控える
- サプリメントを活用する
- 射精頻度を調整する
栄養素を意識した食事を摂る
精液や精子の生成には食事から摂取する栄養素が非常に大切です。
例えば、
- 亜鉛
- 葉酸
- アルギニン
- ビタミンA
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ビタミンE
- βカロテン
などは精液量・精子の質改善に有効です。
代表的な食材は牡蠣、ウナギ、ほうれん草、マカ、トマト等が挙げられます。
ただし、特定の栄養素だけに偏ることなく、バランスのよい食事内容が精巣機能の維持・生殖能力アップのために大切です。
妊活中の場合は控えたい食材があるのも忘れずにしましょう。
適度な運動を取り入れる
肥満は男性ホルモンの低下を招き、精液量も減少します。
適度な運動や筋トレにより適性体重を維持することがポイントです。
有酸素運動で血流が良くなると精液や精子の質向上が期待できます。
妊活には骨盤底筋(PC筋)を鍛える運動も効果的です。
ストレス軽減にも運動が有効で、肥満だけでなく痩せすぎも精液量や精子の機能低下につながるので、体重のバランス管理を意識しましょう。
良質な睡眠を確保する
充分な睡眠は精液の量や質の維持に役立ちます。
睡眠不足や長すぎる睡眠はいずれも精液量減少や質の低下につながります。
1日7〜8時間、生活リズムを整え、質の高い休息を取り入れることで、精子濃度や受精能力も向上しやすいです。
自然妊娠を望む方はパートナーと一緒に習慣を見直しましょう。
ストレスを減らす
慢性的なストレスはホルモンバランスの乱れや血流障害につながり、精液の質・量を低下させる可能性があります。
リラックスできる趣味や休息時間の確保、適度な運動や十分な睡眠、バランスの取れた食事、家族や専門医への相談など日常でできるストレス緩和策を日々意識しましょう。
アルコールや喫煙を控える
脂質や炭水化物の多い食事、過度な飲酒・喫煙は男性ホルモン分泌低下や精巣機能の悪化につながります。
精液や精子の状態を維持したい場合は、適量の脂質・コレステロールを心がけ、飲酒量を抑え、できれば禁酒・禁煙に取り組みましょう。
アルコールが適量であれば問題ないという報告もありますが、お酒に弱い方は特に注意が必要です。
サプリメントを活用する
不足しがちな栄養素を補うにはサプリメントも有効です。
亜鉛やビタミンB群・D・Kなどは男性ホルモンや精子の形成に関わります。
特に牡蠣や豚レバー、きのこ、山芋などを積極的に摂りましょう。
厚生労働省の基準値に合わせて、亜鉛・ビタミン摂取を心がけることで精液量の改善が期待できます。
食事で十分に補えない場合はサプリメント活用を検討してください。
射精頻度を調整する
射精頻度の調整も精液量維持には大切です。
定期的な射精はテストステロンの維持や精液サイクルの活性化に繋がり、前立腺の健康保持やホルモンバランス安定にも寄与します。
月21回以上の射精が前立腺がんリスク低減に有効という研究もあります。
適度な射精で新鮮な精子が絶えず作られることで、妊娠率の向上を目指せます。
精液量を増やす際の注意点

精液量アップを目指す時には、いくつか注意が必要となるポイントがあります。
ここでは、精液量を増やす際の注意点について紹介していきます。
- 過剰なサプリメント摂取に注意
- 極端なダイエットや過度な運動を避ける
- 禁煙・節酒の取り組み方に注意する
過剰なサプリメント摂取に注意
精液量を増やそうとして過剰にサプリメントを摂取するのは注意が必要です。
栄養素は適量で効果を発揮しますが、過剰摂取は肝機能への負担やホルモンバランスの乱れ、胃腸障害などの健康リスクを招く可能性があります。
また、サプリメントは医薬品ではないため、即効性や確実な効果は期待できません。
推奨量を守り、栄養はまず食事から摂ることを基本にしましょう。
極端なダイエットや過度な運動を避ける
適度な運動や筋トレによる体重管理は精液量増加に役立ちますが、極端な食事制限や過剰な運動は逆効果です。
肥満は男性ホルモン減少、精液・精子数低下を引き起こしますが、痩せすぎでも同様の悪影響が報告されています。
心地よい程度を意識して、健康状態や体重をバランス良く保つことが大切です。
禁煙・節酒の取り組み方に注意する
喫煙やアルコール摂取は精巣への血流障害を招きますが、無理な禁煙・節酒はストレスとなり、精液量の減少に逆効果をもたらす場合があります。
徐々に取り組みながらストレス管理も行い、身体と心の両面からバランスを保つ指導・サポートが有効です。
不安があれば医師や専門機関に相談しましょう。
精液量や精子について気になる時は医療機関へ

精液量や精子の状態が気になる場合は、医療機関に相談することで精液検査や不妊治療を受けることができます。
専門的な知識をもつ医師が状況に応じた検査や治療方法を案内してくれるため、早めの相談がトラブルや不安の解消につながります。
ここでは、精液量が少ない場合に医療機関で受けられる検査内容について見ていきましょう。
精液検査
精液検査は、精子の数や運動率、形態、精液量などを測定し、妊娠しやすい状態かを評価する検査です。
通常、2〜7日の禁欲期間を設け、採取した精液を専門機関で分析します。
WHOの基準値をもとに結果を判定し、不妊の原因特定や治療方針の決定に役立ちます。
自宅採取や病院での採精が可能で、正確な結果を得るためには採取・提出方法の指示を守ることが大切です。
不妊治療
不妊治療は、自然妊娠が難しいカップルに対して妊娠の可能性を高めるために行う医療的サポートです。
原因に応じて、
- タイミング法
- 排卵誘発剤の使用
- 人工授精(AIH)
- 体外受精(IVF)
- 顕微授精(ICSI)
などの方法があります。
治療内容や期間は個々の状況で異なり、早期の検査・相談が重要です。
また、身体的・精神的な負担が大きくなる場合もあるため、医師と十分に話し合いながら無理のない計画を立てることが大切です。
まとめ
精液量は、妊娠において非常に重要です。
精液量が少なすぎると、妊娠することが難しくなります。
WHOが定める基準値を参考に、精液量を確認しておきましょう。
また、精液量が少ないと感じた場合は、生活習慣の見直しをすることが大切です。
困った時は専門医に相談することで、適切なアドバイスをしてもらうことができます。
妊活には早期治療・発見が重要なので、気になった時はすぐに医師に相談しましょう。